ガラスの仮面

  • 2020.01.27 Monday
  • 20:27

【出演】 安達祐実、野際陽子、田辺誠一 他

【放送】 1997年(テレ朝)

 

何の取り柄のない貧しい少女が演技の才能を往年の大女優に見いだされた事から女優を目指す成長物語。美内すずえのコミック『ガラスの仮面』の実写化ドラマ。

 

北島マヤは何の取り柄も無いドジで何をやってもダメな中学生。母子家庭でラーメン屋の二階に間借りして暮らしている。学校から帰宅するとラーメン屋の仕事を手伝う毎日だが、ドラマを見るのが何より大好きで子供達の前で実演してみせる特技を持っていた。しかし生活は貧しくテレビを買うお金さえなかった。ある日、マヤのクラスの出し物が劇『国一番の花嫁』に決まり、マヤはその中の登場人物ビビの役を与えられる。みずぼらしくお馬鹿な女の役に落ち込むマヤだが、一人の老婦人の励ましでビビを真剣に演じようと決意する。マヤの活躍で劇は大成功。舞台に立つ喜びを知ったマヤに老婦人はまだマヤは本当の舞台を見た事がないと告げる。実はこの老婦人は往年の大女優・月影千草。二十年前にとある事故で大怪我を負い、女優を引退してしまっていた。今は付き人だった源造と共に大きな洋館で暮らしている。大都芸能の社長・速水真澄は彼女が持つ『紅天女』の上演権を買い取ろうと何度も足繁く通っているが、月影千草は頑として首を縦に振ろうとはしない。それどころか『紅天女』を演じる女優を自分の手で育てようと密かに計画を立てていたのだ。

 

原作は1976年より連載が始まり、今なお完結していないという大ベストセラー作品。平凡な少女が女優を目指し、どんな困難をも乗り越え成長する姿を描いたストーリーは読者を魅了し、夢を与えてくれる少女漫画の金字塔と言っても過言ではない。そんな大ヒット作の実写だけに生半可なキャスティングでは満足できない。そこはそれ。ヒロインの北島マヤは平凡ではあるが女優としての才能を秘めた少女。この役をこなすには演技力が要求される。それだけに当時天才子役と注目されていた安達祐実が北島マヤを演じるのは納得といった所だろう。その他の役柄についても原作にイメージを非常に寄せていて、現代舞台や話数に合わせて設定を変えてはいるものの、制作側が相当ノリノリだったと窺える。唯一イメージが違うと感じたのは速水真澄の婚約者・鷹宮紫織。原作ではおしとやかで殆どストーリーに影響を与えない女性なのだが、ドラマでは速水真澄とマヤを引き離そうと画策する意地悪な女性として登場する。

 

原作が完結していないので(完結するとは思えないのだが・・・)、どうしたってキリのよい場所で切って終わらせるしかない。実際このドラマでは芸能界入りしたマヤが失脚した後、再び女優としての情熱を取り戻す流れで終了している。最大の夢である『紅天女』はまだまだ先。ドラマ版で是非やって欲しかったのが、姫川亜弓が演技力でマヤを陥れた張本人を貶める舞台『カーミラの肖像』。演技の実力差を見せ付けて亜弓がリベンジする舞台だったのだが、やはり表現が難しかったのだろうか。

 

さて、原作を知っていても知らずとも楽しめる内容であるのは間違いない。原作を知っている人にとっては端折られてしまった部分が残念と感じる部分が無きにしも非ずではあるが、漫画を実写にする難しさがあるのでそれも致し方ない。

 

満足度は★★★★★

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理想の上司

  • 2018.06.23 Saturday
  • 09:17

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 松雪泰子、石田ゆり子、長塚京三 他

【放送】 1997年(TBS)

 

会社組織の中で部下を守ろうと必死に上司に立ち向かう部下想いの男のお仕事ドラマ。

 

ファミリートラベル五反田支店の窓口業務を務める白川万里華は団体客の一人がなかなか到着しないせいでパニックになっていた。実は飛行機の出発時刻が変更になった事を伝え忘れるミスを犯していたのだ。迎えに行った鶴田笑美子は客を案内する際に慌てて人とぶつかり、その客のパスポートを取り違えてしまうというミスを犯す。結局、その客は飛行機に乗れなかった。憤慨する客に謝罪する二人だったが客に対する態度がなっておらず、却って客を怒らせる始末。そこへ取り違えたパスポートを持った紳士が現れる。実は彼は同じファミリートラベルの社員の坂本時雄だった。香港から帰国した途端、偶然、取り違えられたパスポートの持ち主・小林菜乃子が困っている場面に立ち会い、この場を収めるために一肌脱ぐことにしたのだ。咄嗟に万里華達に指示を出し、自分の持ち金で客を別の便で香港へ向かわせ事無きを得た。そんな坂本に出た辞令は何と五反田支店勤務。そこは同期入社の柘植義治が支店長を務めていて、支店長代理となった坂本にお荷物社員のリストラを命じられる。候補として名前があがっているのは万里華と笑美子と新入社員の菜乃子。坂本は三人の内一人を切らなければならない。三人と一緒に飲みに行った坂本は誰を辞めさせるか決心がつかず、かつて同僚だった難波保に相談する。

 

何かが起きた場合、企業はその体裁を保つために誰かに責任を取らせる。そういう体質はこのドラマが放送された時代も今も変わって無いのだと改めて思わされるドラマである。そんな中でこのドラマの主人公・坂本のような人物は部下からしてみればこんなに頼りになる上司はいないし、こういう上司の下で働けるのは幸せだとしか言いようがない。但し企業から見れば坂本はどんなに良い人物であったとしてもお荷物としか言えず、実際このドラマはそんな企業の不条理さをそのまま打ち出したストーリーとなっている。

 

上司(とは言っても同期だが)からの盾となって部下を守ろうとする坂本を見ていると、いつも胸が痛くなる。この状況で良く胃に穴が開かないものだと不思議で仕方が無い。寛容で懐が大きく有能。人間的には満点の人物だからこそ、つい感情移入したくなってしまう。家庭内の問題に対しての考え方はやはり古いなと感じずにはいられないが、お荷物社員の三人もそんな坂本に出会えたからこそ人としてもOLとしても成長していくのだとしみじみ感じた。確かに坂本はタイトル通りの理想の上司である。

 

リストラが主体になっているためコメディーではあってもどこかシリアスな影が拭いきれない。それでいて何処かアットホームな側面もあるドラマである。

 

満足度は★★★★

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女監察医・室生亜季子 指紋

  • 2016.08.02 Tuesday
  • 08:48

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【出演】 浜木綿子、姿晴香、立花理佐 他

【放送】 1997年(日テレ)

 

川越で通り魔事件が立て続けに発生する。三件目に襲われた女性二人の内、一人の身元に疑惑が湧く。火曜サスペンス劇場の人気シリーズ『女監察医・室生亜季子』シリーズ第二十二弾!

 

川越では通り魔事件が立て続けに二件起きて世間を騒がせていた。どちらの被害者も同じ包丁で刺殺され、多数の切創、刺創が認められている。警察では前科者のデータベースから該当者の割り出しを図っていたが、雲を掴むような話で成果は全くあがっていなかった。そんな中、浜田警部の娘・秋山美智子が出産のために里帰りをする。美智子の希望で川越で三代続いた開業医で、地域の監察医を務める室生亜季子と同居し、亜季子の患者・竹井陽子の紹介で助産師の小林宏子が美智子の担当に決まる。それから十日後、警察がシンナー中毒の男の身柄を確保し取り調べを続けている間に三件目の通り魔事件が起きる。被害者は陽子と宏子。陽子は死亡したが宏子は幸い傷が浅く絶命には至らなかった。宏子の話では、陽子の部屋へ夕食を作りに行っている間に男が侵入して包丁で襲われたと言う。宏子と同居するギャンブル狂の友人・土屋めぐみの話では侵入者は背が高く覆面を被っていたらしい。めぐみは宏子の部屋にいて被害は無かった。宏子が搬送された病院へ駆け付けた亜季子は宏子の負った三か所の傷の一つが躊躇い傷ではないかと疑問を持つ。

 

傷口から通り魔事件の意外な真相に亜季子が気付くと言うストーリーで、ジグソーパズルがキーとなっている。但し事件に纏わる重要な所で二か所にこのキーワードを用いてしまったのが惜しまれる。確かに最初にこれがあったから次のエピソードに繋がるという関連性を持たせるには有効だし、視聴者に対して親切設計ではあるのだが、反面一つのドラマ内で同じ作業を繰り返すしつこさや不自然さ、芸の無さを感じてしまう。片方は別のトリック等を採用しても良かったのではないだろうか?

 

今回は二件目の通り魔事件の時のみ亜季子の司法解剖が行われる。実際にメインとなってくるのは三件目の方なのだが、こちらは搬送先の病院の医師が親切にも亜季子の役目を奪い取ってしまうため、亜季子はその結果だけを手に推理する事になってしまう。二件目の司法解剖場面は呆気なく終わってしまい、おまけに途中で浜田警部が亜季子に相談したいからと部屋から出してしまうため実質殆ど画面に登場していない。流石にこれは主人公が監察医と謳っているだけに悲しいものがある。

 

それはそうと今回初孫に恵まれた浜田警部。部下の手前、厳しい顔を見せるものの、部下の刑事がいなくなった途端喜びが込み上げて顔が緩み出す。このシチュエーションが非常に印象的で浜田警部の人柄が滲み出るようである。ここの所、亜季子自身にはあまり変化はないものの、浜田警部の身辺に時間の経過を示す出来事が立て続けに起きている。美智子の失恋から始まり、妊娠、結婚、出産と続き、今回はとうとう初孫とお宮参りのエピソードまで追加された。初孫の名前に亜季子の一文字が入るとは、浜田警部親子の亜季子への崇拝ぶりがうかがえるようである。

 

満足度は★★★★

高橋真梨子,十川知司,大森俊之,カラオケ
ビクターエンタテインメント
(1996-06-21)

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奥信濃殺人事件

  • 2016.05.05 Thursday
  • 14:10
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【出演】 片平なぎさ、五十嵐めぐみ、三浦浩一 他
【放送】 1997年(日テレ)

車のトランクから女性の他殺遺体が発見される。冬季オリンピック開催を前に沸き立つ長野を舞台にフリーライターとカメラマンのコンビが奔走する『小京都ミステリー』シリーズ第十九弾!

冬季オリンピック開催が決まった長野が話題となる中、雑誌編集者の柏木尚子と相棒のカメラマン・山本克也は長野の小京都を取材しようと思い立ち、長野入りを果たす。善光寺でお参りをしている最中、気分の悪くなった老婆を助けるため近所の旅館に世話になる。ところが克也は旅館の番頭に見覚えがあるような気がしてならなかった。翌日、元アルペンスキーの候補選手だった三国晴美に案内して貰い小京都・小布施町を訪ね歩いていると、偶然昨日の番頭に再会する。彼は川地健一郎という元競輪選手だと判って克也は大興奮。彼は十年前に落車による怪我で引退を余儀なくされていた。翌日、尚子一行は松代での取材中、晴美の車のトランクの中に女性の遺体を発見してしまう。遺体の状態から怨恨による他殺と判断した警察は被害者・松波景子が三国家を訪ねて殺されたと断定する。景子は晴美の父親の元愛人で金銭トラブルを抱えていた事から晴美の父親が容疑者にされてしまう。

今回のドラマでは二つの家族の絆が問われる内容となっている。大きな問題を抱えながらも表向きは温かい理想の家族を装う一家と、破綻してしまった後に遠く離れた家族を見守り続ける一家。尚子&克也は事件解決に奔走する中で、そんな二つの家族と直面する事になる。家族の絆とは何かのきっかけで著しく傷つけられ破綻してしまうものかも知れない。しかし家族は赤の他人の繋がりとは違う。家族の誰かが苦しんでいる時それを支えられるのも家族である。そして互いに再生を願う気持ちがあればやり直せる。そんな家族の絆の大切さを暗に訴えっている。

事件を解くカギとなるのがこの二つの家族の繋がりである。一見すると全く接点が無さそうに見える二つの家族だが、その繋がりを明かす事が今回の尚子と克也の一番の見所となっている。

尚子を一途に想い続ける克也と克也の愛情を上手く利用して肝心な所でお預けを食らわせる尚子の息の合ったコンビのやり取りが楽しい。尚子が克也の求愛を上手く逃れる手段もお約束ではありながらも徐々に狡猾さを増しているように見える。裏を返せばせいぜい頬にキス程度の関係でここまで協力してしまう克也の空しい努力も惚れた男の愚かさを象徴するものであり、パターン化して単調になりがちなシリーズ物のアクセントになっている。この二人の距離はいつになったら縮まるのやら。

満足度は★★★★
 
高橋真梨子,十川知司,大森俊之,カラオケ
ビクターエンタテインメント
(1996-06-21)

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黒い樹海

  • 2016.03.22 Tuesday
  • 10:03
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【出演】 水野真紀、余貴美子、鶴見辰吾 他
【放送】 1997年(テレ朝)

バス事故で瀕死の状態の姉を置き去りにして逃げた男がいる。姉の死の真相を究明するため妹が奔走する本格ミステリー。原作は松本清張著の『黒い樹海』。

笠原信子と祥子の姉妹は両親を亡くして以来、二人寄り添い合って生きて来た。二人は同じ文啓出版社の社員だったが、姉は信子は人気雑誌『ルミエール』の編集長を務める仕事一筋のしっかり者。それに対して妹の祥子は総務部勤務で、生活費は信子が殆どまかなっていた。ある日、まとまった休日がとれた信子は九州旅行に行くと言い出す。既に36歳の信子は旅行先で結婚相手を探すとはしゃいでいた。信子を見送った翌日、出社した祥子は信子の同僚・町田知枝から信子の訃報を聞かされて愕然とする。金沢で起きたバス事故の犠牲になったと言うのだ。定期入れの中にあった社員証が決め手となったらしい。何かの間違いだと祈りながら金沢の小松病院へ駆け付けた祥子だったが、変わり果てた信子の姿にショックを隠し切れなかった。暫く経ってバス会社の人間から事故の詳細な説明を受けた祥子は信子が後部座席に座っていたために命を落としたにも関わらず、バッグが前方の席の荷物置き場にあり、しかもその中には身元を示す物が何一つ入っていなかった事を知る。定期入れが見つかったのはバスの外。この事に祥子は疑問を抱く。

時代背景もあるのだが、このドラマでは暗に結婚を焦る三十代女性の心情が常に根底にある。当時は男女均等雇用法が施行されて以来、ようやく社会で女性が男性と肩を並べて働く事が浸透してきた時代でもある。仕事一筋の女性も少なくは無く、それ故婚期を逃してしまう女性もいた。今回のドラマでは信子の設定年齢は36歳。一回り近い年の差のある祥子を親代わりとなって育てる一方で、仕事にも手を抜かない。当然ながらプライベートは二の次となり、婚期を逃してしまっている。しかし心の中では結婚に憧れる気持ちがあって、出来れば好きな人と結婚出来る事を望んでいる。信子を通じてこの時代の仕事に生きる女性の心情をドラマに取り入れたかったのかも知れない。

松本清張原作の小説は社会派と呼ばれる物が多く、そのためドラマも比較的固めとなる。ところがこのドラマは非常に柔らかいタッチで描かれており、松本清張特有の固さはあまり感じない。また殺人事件を扱ったストーリーでありながら、謎を解き明かしていくヒロイン・水野真紀の初々しく素朴な魅力満載で、殺伐としそうな雰囲気を一掃してしまう。尚、原作に比べると内容は大分端折られた印象が強い。土曜ワイド劇場枠での放送のため、その時間枠に収めるには仕方が無かったのかも知れない。願わくば協力者の吉井の出番をもう少し増やしてあげて欲しかった。

満足度は★★★★
 
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獄門島

  • 2015.01.20 Tuesday
  • 01:42
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【出演】 古谷一行、秋吉久美子、桜井淳子 他
【放送】 1997年(TBS)

瀬戸内海に浮かぶ孤島で起きた俳句になぞらえた連続殺人事件の謎に金田一耕助が挑む本格ミステリー。原作は横溝正史著の『獄門島』。TBSの金田一耕助シリーズ第二十五弾!

終戦間もない昭和二十一年、岡山県笠岡港には遺骨を抱えた金田一耕助の姿があった。遺骨は金田一の友人・鬼頭千万太のもの。千万太は岡山から南に三十キロ程下った所にある獄門島の出身で、江戸時代に多数の流人が流された事からその名がついたと言う。獄門島へ向かう船に乗ろうとした金田一は船に釣鐘が積んであるのに驚く。船頭の話では一緒に釣鐘も届けるらしい。獄門島の港では千光寺の住職や村長の姿もあり、村人達は新しい釣鐘の到着を心待ちにしていた。そんな中、遺骨を持って現れた金田一はまるで不幸を運ぶ招かれざる客のようだった。その頃、本鬼頭の屋敷では分家筋の鬼頭肇が無事復員するという吉報が舞い込み俄かに祝賀ムードに包まれていたが、皮肉にも金田一から本鬼頭本家の直系である千万太が戦地から帰還したもののマラリア熱でこの世を去ったと報告を受けてしまう。実はこうして金田一がわざわざ遠方から獄門島に出向いた裏には千万太が死ぬ間際まで妹達を案じていた事がある。しかし通夜の席で千万太の心配は現実となってしまう。末妹の花子の遺体が梅の木に逆さ吊りにされた状態で発見されたのだ。

古い時代のドラマを改めて見る楽しみの一つに思わぬ人が思わぬ役で登場するのを目敏く見つけるという楽しみがある。このドラマでは分家の後妻である志保のひも・鵜飼を藤木直人が演じている。今では頭脳明晰な役柄の多い藤木直人の化粧をして怠惰な生活を送るひも役には目が点に。

さて『獄門島』と言えば、その猟奇的な殺害方法がウリとなっているミステリーであるが、このドラマではトリックの肝心な部分がすっぽりと抜けてしまっており、金田一耕助の名推理が唐突過ぎてしまう嫌いがある。本来の『獄門島』で金田一がトリックに気付くきっかけとなっている言葉の聞き違えは、放送禁止用語となっているため映像化は難しい。当然ながらこのドラマでもその箇所は全く触れられていないが、これがあるとなしとではストーリーの趣が大きく変わってくる。まあ、それは仕方ないとしても、もう一つの金田一がトリックに気付くきっかけとなった釣鐘の目撃場面が省かれているのには閉口する。あまりにも簡易的に制作され過ぎてしまって、悲しいかな淡々と殺人事件を追うだけのストーリーになってしまっている。原作を知っている人間にとっては物足りなさは否めない。

満足度は★★★★

横溝 正史
角川書店(角川グループパブリッシング)
(1971-03-30)

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転勤判事

  • 2014.06.03 Tuesday
  • 18:55
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【出演】 渡辺えり子、尾美としのり、渡辺美佐子 他
【放送】 1997年(日テレ)

母親が高校進学を渋る息子を川へ突き落す。転勤となった女判事が事件解決に乗り出すシリーズ第一弾!

判事の二宮純子に東京地裁から甲府地裁の刑事部へと転勤の辞令が下った。純子は姑と共に甲府へとやって来る。実は純子はかつて結婚したが一年で夫と死別。しかし姑とはお互い夫に先立たれた未亡人同士通じるものがあり、仲良くやっていた。甲府地裁へ到着した純子は早速殺人未遂事件の担当を任される。五十嵐節子が中学三年の息子・隆弘に暴行を加え、笛吹川へ突き落して殺害しようとしたと言う内容で、節子は容疑を認めていた。幸い隆弘は川を流れている所を釣り人に発見され一命を取り留めている。仕事を終えて帰宅すると、純子の部屋では姑が引っ越しの荷物を綺麗に片付け、料理を作って待っていた。長男の嫁と折り合いが悪く、純子と一緒に暮らすつもりだったらしい。純子は判事と言う職業柄同居は出来ないと断るものの、姑はまるで聞きはしない。気分転換するまでという条件付きで渋々同居を許可する。

歌詠みの好きな姑と判事としては一人前でも家事は一切駄目な純子。口喧嘩はするし、好みも全く合わないものの、それでも一緒に暮らしていけるのは死んだ純子の夫との思い出や悲しみを共有出来るからなのだろう。いわば二人は嫁姑であって、一人の人間の死を悼む戦友でもある。

今回の事件は奇しくも亡くなった純子の夫がその美しい景色を愛して止まなかった笛吹川。人を助けようと純子の夫は川に飛び込み、結局二人共命を落としたという経緯がある。純子が事件の真相を究明する過程で、川の流れに流されていく人間を必死に助けようとする場面がある。川を泳ぐ姿は酷く不格好で、正直川に飛び込まなくても陸を走れば追いついてそこから救助出来ると思うのだが、助けられた時に飛び出した純子の「今度は助けられた」という言葉が夫を助けられなかった事を未だに悔いている純子の心情が良く表れていた。

しかし蓋を開けてみれば概ねの予想を裏切る結末。純子の疑問が事件を大きく変えてしまったわけだが、明かされた真実は愛に満ちていた事が何よりの救いだろう。

満足度は★★★★


ジョー・リノイエ,伊藤緑,西川進,鈴川真樹,カラオケ
ダブリューイーエー・ジャパン
(1997-09-10)

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名古屋嫁入り物語9 こげな結婚ご破算だ

  • 2014.01.23 Thursday
  • 15:53
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【出演】 植木等、藤谷美紀、倉田てつを 他
【放送】 1997年(フジ)

名古屋の結婚事情をテーマに結婚にまつわる騒動を描いたホームコメディー。『名古屋嫁入り物語』シリーズ第九弾!毎回植木等&山田昌が異なるシチュエーションで夫婦役を演じ、名古屋をこよなく愛するが故に起きる騒動の数々が楽しい作品。

見合い写真を撮影すると良縁に恵まれるという噂の伊藤写真館では店主・伊藤真平が妻の昌と共に先代から引き継いだ時には潰れかけた写真館を手を取り合って続けてきた。しかし真平ももう良い年になり、出来れば次女の那古に婿を取って写真館を継がせたい夢を持っていた。実は長女の夫がカメラマンで目を付けていたのだが、食品専門のカメラマンですっかり期待外れだったため、余計那古の夫への期待が高くなっていた。ある日、お見合いおばさんの加藤とらに頼んで名古屋出身の商社マンと那古を見合いさせる事にしたのだが、とらの手違いで現れたのは高村洋一という東京出身の一級航海士だった。見合いはその場で解散となるものの、洋一は那古に一目惚れ。後日小学校の教師をしている那古が生徒達を連れて船舶博物館を訪れた際に再会した洋一は結婚を前提に那古と付き合い始める。

今回は仕事に生甲斐を感じている女性の結婚を取り上げている。小さい頃からの夢であった小学校の教師となった那古は結婚してからも仕事を続けたいと考えている。そのため仕事が何より優先で、結婚したからと言って夫のために仕事を疎かには出来ない。だからこそ那古は結婚には難色を示している。船乗りの洋一との結婚に踏み切ろうとしたのも、洋一が一度航海に出ると三カ月は帰って来れないと判っていたから、仕事を邪魔されずに済むと思ったからである。

当時は一生の仕事を持つ女性も珍しくなくなってきた時代。そういった意味では那古は現代的な女性と言える。しかしそんな現代的な考え方を親は理解するはずもない。何しろ父親の真平は名古屋一の頑固親父と名高い男である。名古屋の流儀を通そうとするあまり、どうしても結婚したければ船乗りを止めろとまで言い出す始末。またもや前途多難な展開となってしまう。

笑えるのは「うちの娘は国民的美少女コンテストで優勝している!」と真平が名古屋の女はブスばかりと馬鹿にする連中に食って掛かる場面。いや、本当にその通りなのだが、それなら小学校の教師などやっていないだろう。

満足度は★★★★

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迷路

  • 2014.01.10 Friday
  • 06:26
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【出演】 三浦友和、京本政樹、有森也実 他
【放送】 1997年(TBS)

代議士秘書の妻の遺体が山林で発見された。彼女は何故死亡したのかを究明するミステリーサスペンス。原作は森村誠一著の『炎の展覧会・迷路』。

代議士秘書・相良朝夫の妻である留美子は同窓会に出席するために佐賀へ行った。妻の不在の間、狭心症を抱える妻のために朝夫はプレゼントを用意して帰宅を心待ちにしていた。しかし留美子の目的は同窓会ではなく、同窓生の宮地と不倫するのが本当の目的だった。同窓会の後、宮地とホテルで落ち合った留美子は情事の後、佐賀へ向かうが、途中で接触事故を起こす。留美子はそのショックで発作を起こす。翌日、朝夫の元に留美子が死んだと連絡が入る。慌てて佐賀へ富んだ朝夫は警察から留美子が発作を起こして山林に捨てられていた事や、留美子が使用した形跡のある女性用の避妊具を携帯していて男性と関係を持っていた事を聞かされ愕然とする。

死亡した家族が死後放置され、弔い合戦宜しく残された家族が事件究明に乗り出すという流れを使用した作品は他にもあるが、このドラマの場合他の事件も絡めて死亡するまでの経緯を複雑化している。作家によって同じシチュエーションでも随分展開が変わる事に驚かされるドラマである。

相良朝夫という男は随分人間が出来た男である。妻の浮気を知らされた朝夫は妻を責めるより自分を責めてしまう。結婚以来、肉体関係の無かった夫婦。これはあくまで狭心症の妻を気遣っての事だったが、留美子は命を削ってでも女として生きる道を選んでいる。それが形となったのが宮地との不倫。感情を露わにせず、常に冷静に対処する朝夫は出来過ぎて人間らしさが欠乏しているようにも思える。しかし彼は政治家を目指して代議士秘書となっている。野心がないはずがない。いつ彼の隠された顔が露呈するのかそちらの方が事件そのものよりドラマの主体となっている。

最終的には留美子の妹である僚子が警察と連携して真相を究明する事になるが、惜しまれるのは彼女の密かな朝夫への憧れや思慕があまり画面には出ていない事。出来ればそこまで掘り下げて欲しかった。

満足度は★★★★

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恐喝者

  • 2013.11.10 Sunday
  • 20:49
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【出演】 古谷一行、本田博太郎、藤真利子 他
【放送】 1997年(日テレ)

逃亡生活を続ける孤独な脱獄囚が愛した女へ示した愛の手段は恐喝だった。大洪水の中、九死に一生を得た男と女のサスペンス。原作は松本清張著の短編小説『恐喝者』。CG合成による大洪水の場面はかなり大規模で迫力がある。尚、このドラマの番組内容にはヒロインの名前が多賀子と記載されていたが、多恵子の誤り。

九州筑前市は三日も雨が降り続く悪天候に見舞われていた。竹岡多恵子は多忙な夫の帰りを待っていたが、生憎会議が長引いて暫く帰って来れないと連絡を受けて落胆する。その頃、一年前に傷害事件を起こした尾村は筑前拘置所の中で妻の離婚意志を弁護士から聞かされていた。実は五年前、尾村は陶器メーカーの営業マンで、同じ得意先を回る別会社の加治と共に山陰で銀行強盗を決行し、大金をせしめた。その金を資本に家具屋で成功をおさめた尾村だったが、会社が倒産した加治から金をせびられるのを恐れて加治の殺害を決意。ところが襲ったのは加治ではなく全くの別人。尾村は傷害容疑で逮捕され今に至っていた。拘置所付近の川が警戒水位を超えたのを機に拘置所に避難指示が出される。その最中、堤防は決壊し町は大洪水に見舞われる。混乱に乗じて逃げ出した尾村は逃げ遅れた多恵子のいる竹岡の家に泳ぎ着く。しかし流れてくる家や木材に竹岡の家屋も崩壊寸前。咄嗟に尾村は多賀子を抱えて濁流に飛び込み、命からがら岸まで辿り着き意識を失った多恵子に人工呼吸を施す。しかし多恵子は強姦されたと思い込んでしまう。

このドラマで尾村が見せた愛の形は確かに屈折してはいるが、ある意味無償の愛情である。何の見返りも求めず、ただ愛した女性と何らかの形で繋がっていればそれだけ良い。自分がどんな人間であるのか判っていて、決してそれ以上は求めない。非常に分別のある愛情なのである。勘違いをしていた多恵子は最初は尾村の恐喝に怯える。彼女に悪者の顔ばかりを見せる尾村だが、本来の尾村は多恵子を大切に思っている。その証拠に尾村は自らの身を顧みず二度も多恵子を助けている。ラストで真実を知った多恵子が一人佇む場面では、心配の種は消え、夫との幸せな生活を掌握したはずなのに何故か寂しげに見えた。

トラブルメーカー的な役回りの加治はいるもののドラマは大した波乱もなく順当に進んでいく。何しろドラマが大きく動き出すまでに放送から一時間が経過しているので、本題に入ってからがあっと言う間で、二時間もドラマを見ていたような気がしなかった。

それにしても古谷一行が裸になって人工呼吸を施す場面がどうも間抜けに見えてしまうのは気のせいだろうか?

満足度は★★★★

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