昭和四十六年大久保清の犯罪

  • 2018.07.10 Tuesday
  • 09:59

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 ビートたけし、佐藤慶、木内みどり 他

【放送】 1983年(TBS)

 

連続婦女暴行殺人事件を起こした大久保清の犯罪の実録ドラマ。原作は筑波昭著の『昭和46年、群馬の春大久保清の犯罪』。

 

昭和四十六年五月九日、瀬間宏子が行方不明になった事から始まる。その日、宏子は会社帰りに高校の美術教師と称する男から絵のモデルになって欲しいと頼まれ、浮かれ気分で帰宅する。宏子はその事を義姉に話すが、過保護な兄を懸念してこっそり出掛けてしまう。しかしその日、宏子は帰らなかった。心配した兄は警察へ連絡するが警察は家出だと決め付けて取り合ってくれなかった。仕方なく職場の面々に手伝って貰って探し回っていると、乗り捨てられた宏子の自転車の指紋を消している男を発見する。その男とは女性を強姦して二カ月前に出所したばかりの大久保清だった。一方、別の女性が大久保に強姦されたと訴えた事により、警察はようやく大久保の身柄を拘束する。その時、大久保は女子高生と一緒だった。女子高生から話を聞くと大久保は言葉巧みに彼女を車に乗せ、絵のモデルにすると言ってモーテルに連れ込んでいた事が判る。しかし大久保の供述は一貫性が無く、宏子を殺害して埋めたと自白した場所を調べると別の女性の遺体が発見され、大久保の犯罪が明らかになっていく。

 

八人の女性を殺害した実在の人物・大久保清の犯罪を実録ドラマとして制作した作品である。実録ドラマであるため、事実が優先となりドラマとして楽しめるかどうかはまた別の問題。何の先入観も無く見た場合、時系列が複雑に入り組んでいて構成が判りづらい。大久保の供述から突然何の脈絡もなく過去へ話が飛んでしまったりするので、ついていけない事も多々あるので注意が必要となる。尚、このドラマは犯罪を犯した大久保よりもむしろ、のらりくらりと事情聴取をやり過ごす大久保から大久保の心を掴み、大久保から真実を引き出した唯一の刑事の軌跡である。

 

大久保が事件を起こした背景には育った家庭環境が影響してる。父親は女好きで平気で息子の嫁に手を出すような節操のない男で、母親はそれを知っていながら目を瞑り、そのやり切れない気持ちを清を溺愛する事で晴らしている。大久保はそんな環境で育って来た。母親からの歪曲した溺愛、息子の前でも醜態をさらす父親。確かにまともな家庭とは言い難い。しかしだからと言って犯罪行為に走るのはまた別の問題である。

 

ドラマを見ていると見えて来る大久保の姿は非常に頭の良い人物。文学的センスを持ち合わせ、普段の姿は勤勉で子煩悩で人当たりも良い。ただ父親からの遺伝なのか女を犯す事に罪悪感を持たないのである。道徳心を欠いていると言えば良いのか、それとも父親を見て育ったせいで自分の中で女を犯す事を容認してしまっているのかは判らない。真相を語る大久保の姿に犯罪を悔いている様子は見られなかった。

 

ドラマは大久保の事件を担当した刑事が事件の真相を聞き出すまでの話となっている。その後、死刑となった事はただテロップだけで伝えられているので、大久保が死ぬまでの間にどんな生活を送ったかは判らない。しかし根気強く大久保から真実を聞き出した刑事の最後のさばさばした口調に、それまでどれだけ大久保の相手をするのを苦痛に感じていたかが窺い知れた。

 

満足度は★★★★

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怪談 妖蝶の棲む館

  • 2016.02.15 Monday
  • 20:14
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【出演】 佳那晃子、峰岸徹、本阿彌周子 他
【放送】 1983年(フジ)

藩主に手籠めにされ背中に蝶の刺青を彫られた女が身投げする。女の背中から飛び立った妖蝶が無念を晴らすべく飛び回る異色時代劇。

丹波国領主・別所吉成は家臣を従えて野山を駆け回り猟の獲物を探している最中、花を愛でているお琴の姿に目を留める。お琴は秋月弦之助に嫁いでまだ一か月の新妻。お琴を見初めた吉成はその場で手籠めする。城に連れて来られたお琴は霊水なる物を飲まされ、意識朦朧となったところで背中に揚羽蝶の刺青を彫られてしまう。吉成は無類の蝶の収集家で、自分の女に蝶の刺青を入れて楽しむ癖があった。見張り役が居眠りしている間に城を抜け出したお琴は古井戸に身を投げてしまう。その頃、弦之助やお琴の姉夫妻はお琴の行方を必死に探し回っていた。お琴が行方知れずになって丸二日、絶望する弦之助の前に妖しい光を放つ蝶が飛んでくる。

横暴な藩主に辱めを受けた女が蝶に姿を変えて復讐する話ではあるが、古来からある怪談話とは異なり色々な要素を取り入れてストーリーを複雑化する傾向がみられる。お琴の復讐劇だけでなく別の女の恨み話が登場したり、復讐相手が藩主とその家臣だけに留まらず家臣から寵愛を受けていた遊女にまで及んだり、飽きないよう工夫がされている反面、手を出し過ぎて話が雑多になっている嫌いがある。またあまりに人を殺し過ぎ。

見せ場は憎き吉成の殺害場面。蝶と思しき色鮮やかな光(紙)が舞う中、吉成が破滅する。あの鮮やかさな光景は非常に印象に残る。今のようにCGを使用する事は出来ないだけに苦労の跡がひしひしと窺える。またその吉成を演じる峰岸徹の目の淵の化粧にも注目!血の色をした真っ赤な顔料がたっぷり塗り込まれ、元々目力の強い俳優だけにその迫力に思わず絶句。

気になったのは他の時代劇にはあまり使われない言葉が登場する点。特に印象付けたい場所にそういった言葉が使われる傾向がある。わざと演出として使用しているのかも知れないが、そういう部分に現代っぽさを感じる。放送された時代の視聴者に判り易くするための配慮だとしても出来ればせっかくなので時代劇にどっぷり浸かりたいところである。

満足度は★★★
 
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大奥

  • 2014.02.05 Wednesday
  • 15:51
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【出演】 栗原小巻、大谷直子、岸田今日子 他
【放送】 1983年(フジ)

大奥の創生から江戸城開城までの女達の波乱に満ちた人生を刻んだ大奥の歴史絵巻。関西テレビ25周年記念番組として東映と組んで制作され、1968年に制作された『大奥』のリメイク版となっている。ナレーションは全話に渡って岸田今日子が務めている。

大政奉還によって政権は朝廷へ返還され徳川幕府の栄華を誇った江戸城開城に至った。大奥の最期を見届けるように大奥の最期の日を綴った女中・袖萩により、これまでの大奥の歴史が語られていく。

慶長二十年、徳川軍に攻められた大阪城は落城し、豊臣氏は滅亡した。炎上する大阪城から救い出された豊臣秀頼の正室・千姫は母・お江与の元へ身を寄せる。お江与は徳川幕府第二代将軍徳川秀忠の正室。しかし徳川家康は豊臣の息のかかった者を徹底的に排除すべく、豊臣の養女であったお江与を亡き者にしようと企んでいた。家康は愛妾の阿茶の局と秀忠にその事を告げるが、お江与を寵愛する秀忠が難色を示す。ある日、お江与と子供達が眠る御所で不審火が起きる。家康の企みに薄々感付いていたお江与は新たに出来た奥を『大奥』と名付け、政治の火の粉が届かぬ秩序ある男子禁制の場とする事を定める。

日本の歴史の中で、お江与が創成し春日局が取り仕切った大奥が徳川の世が終わるまでの間延々女達の園として存在し続けた事は驚くべき史実である。政の道具としてしか扱われなかった女が子供を安全に守り育てる場所を欲した結果作られた大奥であった。そして大奥の規則もそこでの暮らしを守るための規則であった。ところがいつの頃からか大奥は将軍の跡継ぎを育てるより、跡継ぎを儲ける場の意味合いが強くなり、大奥に仕える女達はあわよくば上様の目に留まり次期将軍の聖母になる事を夢見、そうならぬ者は大奥内での権力争いに躍起になる始末。そんな大奥の創生から落日までをあくまで大奥の女達中心のエピソードで綴っている。そのため長き年月を綴った内容ではあるものの、歴史絵巻としては少々物足りない。時には時代が前後してしまう事もあるし、将軍が全く登場しない事も多々ある。政に関する情報が少ないため何故に時代が変貌したのかも判らない事もある。

さてドラマでは大奥を創生したお江与と最後の大奥総取締役を務めた瀧山の双方の役を栗原小巻が演じている。様々な大奥に纏わるエピソードでは華やかな女優陣が主役となって登場するが、その中でも重要なポジションを二役演じた栗原小巻は特に脚光を浴びせた存在である。このドラマを見ていると当時の女優たちの栄華を反映している。

それにしても史実に残される情報が少ない中、そこから如何にしてストーリーを練り上げるかによって同じ史実からも全く異なる話が生まれる。どんな風に史実が料理されるのか非常に楽しみだった。必要以上に感情をぶつける事のないストーリーは見た目の華やかさには少々かけるものの、その分リアリティを感じた。

満足度は★★★

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知られざる動機

  • 2013.09.08 Sunday
  • 19:30
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【出演】 藤真利子、高岡健治、吉行和子 他
【放送】 1983年(日テレ)

信じていた母親の本性を見た時、それまで信じてきた平穏な家庭が壊れていく。何もかも信じられなくなった娘の葛藤を描いたサスペンス。原作は松本清張著の『新開地の事件』。

東京近郊の田舎町で養豚場や畑を営む長野家の娘・富子は両親に大切に育てられてきた。ところが結婚を前提に交際していた画家の徳永から突然別れを告げられる。徳永の両親が興信所に素行調査を頼んだ所、母親のヒサに問題が生じたと言う。山梨の貧しい家に生まれたヒサは生活のために遊郭で娼婦をしていた過去がある。ヒサの出自にショックを受けながらも、働き者のヒサを馬鹿にした徳永一家に富子は強い反発を抱き、両親が勧める長野家に間借りしている青年・忠夫との結婚を考え始める。両親と親交の深い忠夫ならばヒサを馬鹿にしたりしないだろうと考えたためだった。しかし忠夫は人目を忍んでヒサと豚小屋で愛し合う仲。そもそも富子と忠夫の結婚の話も、ヒサが忠夫を別の女に盗られるくらいなら娘にと考えた事から出た話だった。

ヒロインの富子は言ってみれば平和な田舎町で何不自由なく育った純粋無垢なお嬢様。父親はアルコール中毒気味、母親は下品でいやらしいと多少問題はあるもののそれは目を瞑ってやり過ごせるレベルであり、仲睦まじい夫婦の姿は富子にとって理想的な夫婦像だったと言える。実際、富子の両親は富子が自慢の娘と猫かわいがりしていた。そんな富子に家族への疑惑が生じたのは交際相手の徳永から結婚を断られた時だった。その時はまだ富子はヒサの事を好意的に考え、信じようとしていたが、次第にヒサの隠された一面を目の当たりにする度に富子はヒサへの信頼を失っていく。そもそも箱入り娘も同然の富子にとって、ヒサの奔放さは理解の範疇を越えているのである。富子が純粋だからこそショックも大きかったと思われる。

そうこのドラマは富子が純粋故に起こった悲劇なのである。

さて富子の視点で語られる内容なので、次第に打ち砕かれていく富子を待ち受ける結末はあまりに悲しい結末だった。しかしこれを富子ではなく夫の忠夫の視点で見ればこんなに美味しい話はない。幸せな一家が描いた地獄絵図。それが忠夫の美酒となる。そんな皮肉が如何にも松本清張らしさを醸し出すドラマだった。

満足度は★★★★

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坂道の家

  • 2013.08.08 Thursday
  • 00:33
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【出演】 坂口良子、長門裕之、石田純一 他
【放送】 1983年(日テレ)

金目当てで近付いた女に溺れていく男。老いらくの恋の行方を描いたサスペンスドラマ。原作は松本清張著の『坂道の家』。エンディングで流れる『聖母たちのララバイ』は1982年に日本歌謡大賞を受賞する程の大ヒットとなった。

クラブホステスの杉田りえ子は心臓疾患を抱えながらも実家に送金しなければならず、質素な生活を送っていた。ある日、ふらりと立ち寄った本郷台の洋品店で店番をしていた寺島の好意で、持ち合わせが無かったにも関わらずセーターを手に入れる。寺島はりえ子が身持ちの固い純情な女だと知って惚れ込んでしまい、りえ子の勤める『キュリアス』に通い詰めるようになる。二人はそのまま友好的な関係を続けていた。ところがりえ子に金払いの良い客がついたと聞きつけたりえ子の元恋人・山口が現れ、りえ子に寺島を誘惑して金を搾り取れと迫る。

ドラマはりえ子の視点を中心に流れ、ろくでもない男とずるずると関係を続け、言われるままに寺島の愛人となって金を搾り取るりえ子がやがて破滅するまでを描いていく。

注目すべきは寺島のりえ子への愛情と執着。寺島とりえ子は親子程に年齢差がある。若いりえ子の体に溺れた寺島の愛情は徐々に執着へと変貌し、りえ子に山口という恋人がいると知ってからは更にその執着の度合いを強めていく。りえ子から仕事を取り上げ、高台の上にある一軒家に住まわせ軟禁状態に置く。その狂気に見ているだけで背筋が寒くなる。どこまでも加速していく老いらくの恋は狂気と紙一重。これが人生最後の恋だと思うからこそ我を忘れてその恋にのめり込んでいく。

そんな狂気の前でりえ子は為す術も無く、ただ男二人の間で運命を弄ばれていく。そもそもりえ子という女性は自分では何も求めていない。寺島から搾り取った金は全て山口の借金や店の契約金、そしてりえ子が店を辞めるために必要な借金の補填などに使われ、りえ子自身には全く渡っていないのである。りえ子の願いは一貫して例えば花屋のような小さな店を持つ事だけ。しかし最後までりえ子はその夢に一歩も近付いていない。

私が一人でやりました。

ラストでりえ子が言い続ける言葉は感慨深い。故郷の流氷のように漂うだけの人生と決別するかのような寂しいラストだった。

満足度は★★★★★

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高木彬光の刺青殺人事件 ー天才神津恭介の推理−

  • 2013.04.09 Tuesday
  • 10:52
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【出演】 近藤正臣、大和田獏、高田美和 他
【放送】 1983年(テレ朝)

体に刺青のある三兄妹を狙った殺人事件を数学の天才・神津恭介が解明する。原作は高木彬光の傑作小説『刺青殺人事件』。このドラマは神津恭介が探偵役として登場する土曜ワイド劇場の神津恭介シリーズの第一弾でもある。第二作以降はタイトルが『神津恭介の殺人推理』で統一された。

ルポライターの松下は取材も兼ねて恋人の兄である神津恭介を刺青競艶会へと連れ出す。数学の天才と名高い恭介は現在ノイローゼを患い入退院を繰り返している。しかし刺青に興味のない恭介は終始しかめっ面だった。一方、松下は野村絹枝と親しくなり、彼女の見事な刺青『大蛇丸』に魅せられる。絹枝が雇われママを努めるスナック『セルパン』を訪れた松下は絹枝の優勝を祝っていたが、そこへ絹枝の刺青を売ってくれと刺青コレクターの早川博士が現れる。

刺青とは人の肌に色を入れて描いていく美術作品とも言えなくもないが、早川博士はそれらをコレクションにしている。ドラマでは度々早川博士のコレクションルームが登場するが、その気色の悪い事。まあ、本物ではないとは思うが、死んだ人間の皮を剥ぎ取って広げた背中から臀部にかけての皮が至る所に飾られている。刺青をコレクションにするにはそうするしか方法がないとはいえ、流石に剥ぎ取る場面を思い浮かべると胸元がむかむかしてくる。

奇抜な密室トリックに全身に刺青を施した全裸(或いは半裸)の美女たちの耽美な世界観。おまけにそれをバラバラに切り刻んでしまうのだから、ミステリー好きならば涎の垂れそうなシチュエーションである。そして探偵役にはこれまた当時としては珍しい半病人の天才。それを当時二枚目俳優として活躍していた近藤正臣が独特の口調で演じるのだから、現在のドラマで例えるならば『ガリレオ』に匹敵するインパクトの強さである。要するに『ガリレオ』の元祖とも言えるキャラクターが探偵役だけにヒットしないわけはない。

但し乳房を惜しげもなく晒した美女(?)達が登場するため、表現的に地上波での再放送は難しいと思うが、今年BS朝日で再放送された際には保存状態が悪かったためか音声が波打ったように聞こえるのが残念である。

満足度は★★★★★

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密室航路

  • 2012.06.16 Saturday
  • 00:26
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【出演】 二谷英明、佐藤友美、仙道敦子 他
【放送】 1983年(日テレ)

幸福の絶頂にいたはずの新婚旅行中の花婿が密室で自殺!花婿の死に疑惑を抱いた女性雑誌記者が真相究明に乗り出す本格ミステリー。原作は夏樹静子著の『密室航路』。娘役にはまだ子役時代の仙道敦子が起用されている。

輸入高級ブランドの偽物が市場に出回っている事が世間を騒がせている中、雑誌『週刊レディ』編集部ではその実態調査に乗り出していた。丁度その頃、編集部員の光井聡子の弟・賢一が結婚する。編集長の吉岡はそれを機に亡き妻の妹でもある聡子と結婚しようと考えていたが、二人の関係を知った吉岡の娘・由起子がショックを受けて家出をしてしまう。その矢先賢一がサンフラワー号の密室の貴賓室で遺体となって発見される。奇しくもその船には由起子も乗り合わせていた。

出た!「ナウい!」・・・はさておき、このドラマは二つの側面からストーリーが進行していく。

一つは聡子と吉岡の結婚問題。吉岡の妻が死んでから既にかなりの年月が過ぎ、その間、密かに愛を育んできた聡子と吉岡。しかし由起子は中学生。叔母が父親と結婚する現実を受け止めきれない。深く愛し合いながらも結婚に至れない大人の恋愛の側面。

もう一つは賢一の死に関する問題。海上を漂う船の上で発見された賢一の遺体。事件当時部屋は密室で遺書らしき書置きも残されていた。状況的には自殺と判断されるのも当然だが、賢一には自殺をする動機がない。賢一の死の謎を追うミステリーの側面。

ミステリーならば後者だけでも十分成り立つ話なのだが、そこは夏樹静子作品らしく女性の心情を巧妙にミステリーに交えていく。序盤は全く異なるポジションに置かれた二つの側面も佳境に差し掛かるにつれ、次第に交じり合って一つの物語を形成していく。ただのミステリーで終わらない奥行きの深さが感じられるドラマになっている。

肉親を失った悲しみと愛を失った悲しみ。二つの悲しみが聡子を復讐の鬼へと変貌させていく。やがて真相を知った聡子が復讐に身を委ねるか、それとも思い止まるかがこのドラマの一番の見せ場となっている。

それはそうと出番は少ないものの、島村佳江の妖艶な美女役は見事の一言。火曜サスペンス劇場然り、土曜ワイド劇場然り、数多くの二時間ドラマに出演したのが頷ける名脇役ぶり。少々ハスキーな声に長い黒髪。愛人や悪女など一般の幸せとは縁遠い役柄がまさにハマリ役の女優である。

満足度は★★★★
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ふぞろいの林檎たち

  • 2012.05.02 Wednesday
  • 11:57
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【出演】 中井貴一、時任三郎、高橋ひとみ 他
【放送】 1983年(TBS)

落ちこぼれ大学生三人と彼らを取り巻く人々の青春群像劇。オープニングではサザンオールスターズの『いとしのエリー』を背景にリンゴを放り上げる手の映像が印象的な作品。後に第四シリーズまで制作された『ふぞろいの林檎たち』シリーズの記念すべき第一弾。

仲手川良雄、岩田健一、西寺実は共に国際工業大学に通う大学生。三人はいつも吊るんでいる友人だが、周囲は男だらけで親しい女友達もなく、また後輩からは虐めを受けたりと大学生活にイマイチ満足していなかった。そんなある日、三人は女の子目当てにサークルを立ち上げようと計画する。ビラを配って必死にサークル員を募集する。しかし四流の大学のサークルに人が集まるわけもなく、たった一人現れたのが期待外れの肥満体の女子大生。三人が諦めかけたその時、おずおずと彼らが思い描いていたような美人の女子大生の二人組が現れ、三人は大喜びする。

奇しくも大学にランクがあると知ったのはこのドラマを見てからだった。今では大学の数も増え、名前も知らない大学も限りなくあり、それどころか大学の閉校も珍しくはなくなってしまった。しかしこのドラマの放送当時は受験戦争が白熱していた時期で、大学の募集人員よりはるかに受験生が多かった時代。浪人するのは当たり前。一流大学に入るために何年も浪人する人もいれば、適当な大学で手を打って名の知れない大学で妥協する人もいた。

このドラマで中心となる大学生三人は上を望めず、四流の大学に甘んじてしまった三人。しかもこの大学の学生である事を心のどこかで恥じている節が見られる。だからと言って今更状況が変わるわけでもない。不条理な世の中や様々な物事に対する不満。そんなものと格闘しながら、友情、恋愛、就職活動、家族関係等々に向かっていく姿を描いている。

勿論、大学生三人と関わる人々も型枠にはめられた人間ではない。東大卒の本田は常に冷めた見方をし、恋人が風俗店で働く事を何とも思っていない。春江と陽子は女子大生ばかりが優遇される事に不満を抱く看護学生。綾子は容姿に激しいコンプレックスを抱いている。

こんな普通とか平凡と言った言葉からは何かしらはみ出した人々が作っていくストーリーだから何もかも想定通りとはいかない。いつも何かしら失敗や挫折が待ち受けている。だからこそ共感が生まれる。何もかも順調に行く人はごく僅か。何かしら挫折を味わって生きている。その挫折がこのドラマの登場人物の誰かの生き方の中に見出せるのである。

以前は大学生主体のドラマとなるとどちらかと言えば暗く屈折した作品が多かったように思う。しかし誰もが大学に入学する放送当時にはむしろ大学は受験戦争から解放されて羽を伸ばす場所という認識が定着してくる。今ほど就職難ではないので大学生は遊んでばかりというイメージが大きい。ドラマではそんな大学生でも色々な苦労があると示すと共に、未成熟でお馬鹿な一面も同時に表現している。また登場人物のそれぞれが個性的でありながらもリアリティがあり、ストーリー運びも絶妙でついつい見入ってしまう。

満足度は★★★★★
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本陣殺人事件 三本指で血ぬられた初夜

  • 2011.12.31 Saturday
  • 23:07
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【出演】 古谷一行、本田博太郎、高峰美枝子 他
【放送】 1983年(TBS)

初夜を迎えた新郎新婦の密室殺人事件の謎に金田一耕助が挑む本格ミステリー。1977年に同じく古谷一行主演で横溝正史シリーズの第二弾として制作されたが、装いも新たに二時間枠のドラマとして放送された金田一耕助の傑作推理の第一弾。原作は横溝正史著の『本陣殺人事件』。元々複雑なトリックに定評のある作品であるが、このドラマでは更に不明瞭だった犯人の殺害動機に然るべき理由づけをされ、秀逸のリメイク作品となっている。

恩人の娘である克子が岡山の旧家・一柳家の当主である賢蔵と結婚することになった。その縁から金田一耕助は結婚式に出席していたのだが、その夜、初夜を迎えた新郎新婦の部屋から静寂を切り裂くような琴の音が鳴り響いた。異変を感じた金田一耕助や一柳家の人々が離れへ駆けつけると、部屋の中は血の海と化していた。

1977年に放送されたドラマと比較すると格段に質の上がったドラマに仕上げられている。勿論原作が同じなのでトリックやストーリーは一緒だが、その裏に流れる旧家故の悲しみや苦しみなどが効果的に肉付けされ、より登場人物の心情に重点を置いた内容となっている。画面から登場人物の感情がリアルに伝わってくるだけに非常に印象深い。そのせいか映画やドラマで何度も実写化された作品ながらも、タイトルを聞くと真っ先にこのドラマが思い浮かんでしまう。

特に印象的だったのが本田博太郎の目線。役柄的には金田一に協力的な人物なのだが、どんな場面においてもまずその目の動きに目がいく。善人でありながらもどことなくアクのある演技はこのドラマの中でも際立っていた。

ところで古谷一行の金田一耕助と言えば親しみやすく庶民的で憎めない面が好評だった。今回のドラマでもその特徴は活かされているものの、流石に年月には勝てないらしい。髪型が小ざっぱりしただけでなく、年齢が上がった分だけ落ち着いた金田一耕助になっている。もっともこのドラマを皮切りに始まった金田一耕助シリーズが長く続いただけに結果的には定着した感もある。

満足度は★★★★★
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家族ゲーム

  • 2011.12.09 Friday
  • 01:27
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【出演】 長淵剛、松田洋治、白川由美 他
【放送】 1983年(TBS)

昭和の後期、激しい受験戦争を勝ち抜くため劣等生と風変わりな家庭教師が二人三脚で努力する様を描いたホームコメディー。原作は本間洋平著の『家族ゲーム』。ドラマが開始する以前に映画が話題になり、特に横一列に並んで食事をする奇妙な風景が当時の日本の家庭を風刺した表現として注目を浴びた。またドラマ版ではミュージシャンの長淵剛が初のドラマ出演で主演を務め、主題歌・挿入歌も長淵剛が担当している。

沼田家は息子が二人の四人家族。弟の茂之(通称:シゲ)は中学三年生で受験を控えている。両親に溺愛される秀才の兄の慎一と比べ、シゲは落ちこぼれで頼りなくこのままでは高校進学もままならない。仕方なく家庭教師をつけることにする。ところがやって来たのは真面目とは無縁の長髪青年・吉本。そんなこととはまるで知らないシゲは早速逃げ出そうとするが、吉本はシゲを力で抑え込んで独特な勉強法を叩き込む。

少子化の現在からは考えられないほど過熱していた昭和後期の受験地獄。高校受験は中学受験を経験していない公立中学に通う子供達にとって最初にぶち当たる壁とさえ言われていた時代。しかし勉強方法は所謂つめこみ勉強が主体だった。そんな時代において、落ちこぼれてしまう子供は少なからずいる。勉強範囲が広範囲に渡るため一度ついていけなくなれば、周囲の子供達と差は開くばかり。次第にそうした落ちこぼれの子供達は道を外れ、勉強自体から逃げてしまうようになる。シゲはその最も典型的なタイプと言える。秀才の兄と比較されるからこそ尚更自分を卑下し、出来ないと思い込んでしまう。

吉本がそんなシゲに課したのはただ詰め込むだけの勉強ではなかった。それだけならどんな家庭教師にも出来てしまう。飄々として一見頼りないように見える吉本の教育法は意外と理に適っている。根性なしで逃げる事ばかり考えているシゲに真正面から「勉強しろ」と強要してもうまくいくわけがない。そこはプロの家庭教師。暴力ともスパルタとも言われつつもシゲがどうしても勉強せざるを得ない環境を作り出していく。

素直に受け止めれば落ちこぼれを一流高校に入学させる過程を描いたシゲの成長物語だが、裏を返せば当時の日本の受験戦争事情を風刺したドラマともいえる。シゲが念願の高校に入学を果たしたことでチャンチャンと終わりが待っていると思ったら大間違い。そこには衝撃的なシゲの姿が待ち受けている。このラストシーンは秀逸である。

満足度は★★★★★
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