<< August 2018 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>

満願 最終夜 満願

【出演】 高良健吾、市川実日子、寺島進 他

【放送】 2018年(NHK)

 

殺人を犯した下宿屋の女将の弁護を引き受けた弁護士が彼女の本心に辿り着くまでを描いたストーリー。原作は米澤穂信著の『満願』。

 

弁護士を目指す苦学生の藤井は火事に見舞われ、急遽知人の紹介で畳屋の二階を間借りする事になる。出迎えたのは淑やかな美しい女将の鵜川妙子。夫の鵜川重治は職人気質で、畳の需要が減り店の経営が立ち行かなくなったせいで酒浸りの生活を送っている。そんな駄目な夫を妙子は自らも着付けの仕事をしながら支えていた。彼女は祖先が功績を称えられ、殿様から掛け軸を貰った事を誇りに思っていて、虫干しをしながら藤井にその話を語る。また藤井が下宿代を払えなくなればこっそり用立てしてくれたり、試験で焦りを感じれば励ましてくれたり、藤井は妙子に感謝するばかりだった。しかし重治にはどんな苦境でも誇り高く凛として生きる出来過ぎた女房が重荷に感じていた。やがて藤井は弁護士となり多忙な日々を送り、妙子への恩を感じながらも仕事を理由に音信不通となりつつあった。そんな中、突如藤井は妙子と再会を果たす。妙子が金貸しの男を包丁で刺殺し、遺体を遺棄したと言うのだ。恩人の妙子の罪を少しでも軽くしようと藤井は妙子の弁護を志願する。

 

このドラマの一番のテーマは殺人を犯した妙子が何を守ろうとしたのかである。それが判るのはドラマの終盤。しかも妙子が服役を終えてからだった。藤井は妙子の弁護人を務めている間には決して見えてこなかった事実を、自分に何よりも守りたいものが出来た事でようやく掴む事になる。実はこの辺りの表現があまり明確ではなく、ぼんやりしているとあっさり見逃してこのドラマが一体何を言いたかったのかが全く判らなくなってしまうので注意が必要である。何気ない日常の映像表現には気を遣った作品だが、重要な部分が判りづらいのがこのドラマの欠点である。

 

このドラマでは下宿屋の女将である妙子が非常に際立っている。潰れかけた畳屋も酒浸りの夫も彼女にはあまりにも不似合なのだ。彼女は決して自分の置かれた立場を悲観せず、自分のするべきことを見つけて過ごしている。夫を愛しているかと言えばそれも違うような感じがする。彼女はただ自分の運命を抗いもせず慎ましく受け入れていると言うべきだろう。それが自分の進む唯一の道だと信じて。妙子が再会した藤井が弁護士になっている姿を見て感激する場面がある。それはあたかも巣立てない自分に代わって、立派に成長した藤井をまるで自分の事のように喜んでいるように見えた。返事の来ない年賀状を藤井に出し続けたのも、彼女にとって藤井は一縷の夢であり、それに繋がっていたいという願望だったのかも知れない。心根が立派過ぎる故の生き方なのであるが、寂しいものである。

 

満足度は★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

満願 第二夜 夜警

【出演】 安田顕、吉沢悠、馬場徹 他

【放送】 2018年(NHK)

 

夫が妻を人質にとって刃物を振り回す事件で若い巡査が人質を庇って殉職した。世間からは大絶賛された美談となったが、亡くなった巡査の同僚警官は事件に疑問を抱き始める。原作は米澤穂信著の『夜警』(『満願』所収)。

 

みどり交番の警官・柳岡は殉職した若い巡査・川藤浩志の葬儀に複雑な思いを抱いて参列していた。川藤は夫が刃物を持って妻を人質にとった夫婦喧嘩の現場に駆け付け、人質を守るために発砲したものの、その際に夫から頸動脈を切られて死亡している。その現場には柳岡もいた。しかし建物の影に隠れて発砲した瞬間は見ていない。世間では川藤の殉職を称賛する声が高まっていたが、柳岡はある種の違和感を覚えていた。と言うのは柳岡が知る川藤はとてもそんな行動をとる人間では無いのだ。柳岡から見て川藤は飲み屋の喧嘩にさえ怯える小心者で、何かミスをすれば上司から叱られるのさえも恐れてミスをひた隠しにする姑息な男。到底警官に向いているとは思えなかった。あの日、本当は何があったのか。その疑問を晴らすべく柳岡は非番の際に川藤の兄・川藤隆博を尋ねる。

 

警官は勇敢である事が求められる。そして規律を守る強さが求められる。

 

警官に求められる要素は警官全てが持ち合わせているわけではない。中には臆病で弱い人間だっている。例え性格的に問題があったとしても何れ成長してそれを克服する可能性もある。だから一概に駄目だと吐き捨てるわけにはいかないのである。それが一般的な見方であるのだが、このドラマの特色的な面は警察官に求められるものが最初から決まっていて、ベテランである柳岡が警察官に向いているか否かを早い段階から判断してしまう所にある。勿論、実際に現場で働く人間であれば新しく入って来た人間に対して様々な偏見を持つ場合もあるだろう。しかしこのドラマの場合、柳岡が感じた向き不向きがドラマの根底に常にあり、それがドラマを川藤という人物像を作り上げていく事になる。

 

美談の主はただのクズだった。

 

ドラマを見ていくと正にこれに尽きる。新人の初々しい警察官がドラマが進むにつれて如何にクズかが判明していく。職場の空気が合わないとか、失敗ばかりで委縮したとかそんなレベルでは無い。どんどん明かされていくクズっぷりに唖然とさせられる。

 

同時に強調されるのが柳岡の人を見る目の確かさである。勿論柳岡は川藤がどんな人間なのかまでは兄から話を聞かされるまでは知らないのだが、何かがおかしい、何かが変だと感じる度に柳岡を演じる安田顕の大きな目が不穏な空気を感じて画面からこちらへ訴えかけて来る。あの目の演技は秀逸である。

 

満足度は★★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

満願 第一夜 万灯

【出演】 西島秀俊、近藤公園、窪塚俊介 他

【放送】 2018年(NHK)

 

資源開発のプロジェクトを任されたエリート商社マンが業界の闇に落ちていく。原作は米澤穂信著の『万灯』(『満願』所収)。

 

総合商社東座商事の商社マンの伊丹は顔中に汗をかき、苦し気な息遣いでベッドに横たわっていた。靴も服も泥だらけ。見た目にも伊丹の容態が思わしく無いのは明らかだった。そんな中、伊丹はこの現状が裁かれていると考えていた。これまでの人生、伊丹は常に最善を尽くし、その甲斐あって多くの業績を残して来た。また社内での人望も厚い。海外で実績を残して来た伊丹に告げられたのは東南アジアでのガス開発事業だった。この事業を成功させれば今度こそ帰国出来るとあって伊丹は張り切っていた。現地へ到着すると、ベトナム支社から派遣された高野が空港まで迎えにやって来た。高野は日本人ではあるが現地に精通した好青年で、仕事に対する熱意も感じられた。しかし現状は思った以上に厳しい。事故で高野が片腕を失い強制帰国させられる事になった事で教訓を得た伊丹は、雨季でも水没しないボクシャ村に開発事業のための拠点を設立しようと考えるが、交渉に行った高野の後任が開発の事を口にした途端、交渉人のアラムの怒りを買ってリンチに遭わされてしまう。

 

順風満帆に見える伊丹の商社マンとしての人生。それは上司からガス開発のエキスパートとからかわれる程に輝かしい業績で、伊丹にとって勲章にもなっている。しかしそこにはいつしか傲りが生まれていた。成功のためならどんな手段も厭わない。例え良心を投げ売ってでもその先に成功と言う新たな勲章が得られれば全ては許される。罪の意識はいつしか麻痺していく。

 

まるで自分を神だと思いこんで暴走する人間の話のようだが、実際の所、やり手と呼ばれる類の人間はビジネスの上では重宝されるし、そういう人間が多くのさばっているのは明白。正攻法で苦渋を飲んでばかりいる人々にとっては実に腹立たしい現実ではあるが、このドラマはそんな伊丹に裁きが下されるというストーリー。成功を目前にしながらベッドの上で病に苦しむ伊丹はもはや成功者どころか崖っぷち。彼がこの後どうなっていくのか想像するのも面白いものである。

 

さて本筋とは関係無いが、このドラマを見て最も強く感じたのは日本が如何に安全な国であるかだろう。

 

満足度は★★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

限界団地

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 佐野史郎、足立梨花、江波杏子 他

【放送】 2018年(フジ)

 

すっかり老朽化が進み廃れた団地にかつてこの団地で暮らしていた男が孫を連れて引っ越して来る。その日からこの団地の住人に男の狂気がじわじわと浸透していく。団地を舞台にした心理サスペンス。

 

寺内誠司は孫の穂乃花を抱えながらじっと家が燃えるのを眺めていた。この火事で誠司は息子夫婦を亡くし、穂乃花を引き取る事にしたのだった。一年後、誠司は穂乃花と共にあやめ町団地に引っ越して来た。この団地は誠司がかつて住んでいた団地でもある。早速誠司は孫の穂乃花と共に隣の桜井家に挨拶に行く。桜井家の息子と穂乃花は同い年で、また友好的な誠司に桜井家の面々は歓迎する一方で、この老朽化の進んだ団地を『夢のニュータウン』と称したり、不躾な質問を平気でぶつけてくる誠司に何処と無く不気味さを感じるのだった。ある日、団地の敷地内で太極拳をしていた誠司の前に突然女が石で殴りかかる事件が起きる。たまたまその場にいた桜井家の主・高志は女から石を取り上げると、女が急に血を吐いて倒れてしまった。その女は誠司の息子の嫁の母親で、自分の娘が死んだのは誠司のせいだと思い込んでいるのだと言う。

 

自分が思い描く楽園。そこで暮らせば幸せになれると楽園に近付こうとする者と、そんなものはただの理想でしか無いと諦める者がいる。ただその思い込みが強い人間は楽園を実際に作ろうと切磋琢磨する。まるで自分が世界を創造する神にでもなったかのように。寺内誠司は所謂のその思い込みの強過ぎる人間であった。しかし寺内が思い描く楽園はただ彼にとってだけの楽園であり、他の人間には楽園であるとは言えない。だからこそ彼は意にそぐわぬ人間を排除し、扱いやすい人間の心を巧みに操って自分の楽園へと導いていく。或る意味これは宗教ともいえるのでは無いだろうか。

 

まあ、そんな寺内が歪んだ常識を振り翳して廃れた団地をかつて団地が人々の憧れだった時代の団地に戻そうとあれこれするのだが、そのために彼は次々人を陥れたり殺害したりするわけで、しかも過去に遡れば彼が手をかけた人間は一人二人ではすまない。それを彼は正義の名のもとに行っているので、罪悪感はさらさらない。そんな何をしでかすか判らない彼の言動が恐怖を煽るホラーになっていて、心理サスペンスとは謳っているもののちょっとやり過ぎて半ばコメディーになってしまっている部分も無きにしも非ずである。主役が佐野史郎だけにかつての冬彦さん再来を思わすような演技だった。

 

このドラマを見ていて注目していたのはどう締めくくるのかという点だった。次第に暴かれていく寺内の悪行。そして寺内によって壊れていく人々。最後までどうなるか気の抜けない展開で、ハッピーエンドのように見えて何かしらの恐怖の余韻を残したラストはホラーの鉄板である。ただその反面、あまりにも定石通りの締めくくりで意外性は感じない。

 

満足度は★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

部長風花凛子の恋

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 りょう、平山浩行、丸山智己 他

【放送】 2018年(日テレ)

 

島耕作シリーズ35周年企画!島耕作が会長を務める会社に勤めるキャリアウーマンの仕事もプライベートも充実したパワフルな生き様を描いたストーリー。原作は弘兼憲史のコミック『会長 島耕作特別編 部長 風花凛子の恋』。

 

株式会社テコットは島耕作が会長を務める会社で、現在社内は会長派と長須派の派閥争いが水面下で激化している。会長の島が海外出張中、IoTスマートビル開発プロジェクトの重役会議が開かれた。常務の長須が執行役員に推薦したのは営業部部長の速見貴文。それに対して社長の国分はプロジェクトリーダーに風花凛子を推薦した。凛子は十年前に中途入社で採用した女性社員で、音大出身という変わり種。しかも面接の際には島の人生の四分の三を仕事につぎ込むと言う発言を撤回させるべく、島の会社で初の女性重役を目指すと宣言した女性だった。現在はその宣言通り、テコット国際本部北米部部長を務める傍ら、プライベートでは恋人の高澤光太郎のジャズ喫茶『デューク』でサックス奏者を務めるという仕事にも恋にも一切妥協せずに人生を楽しんでいた。プロジェクトリーダーに就任した凛子は早速その手腕を発揮する。時短のために無駄を省き、資料はデータでのやり取りのみ、子持ちの主婦には保育園が休園の際は子連れで出勤を許す等々古い体質の社員には考えられない方針を貫く。これにはプロジェクトの一員でかつては凛子の上司だった須田は苦笑い。そんな中、凛子は大事なプレゼンを入社二年目の経理部・吉田に任せると言い出す。

 

命を削るように仕事に精を出す時代は終焉を迎え、これからは自分らしさを失わず公私ともに充実した生活を送るというのが風花凛子の理想であり、彼女はそれを実践している。しかしながら企業は未だ古い考えの人間が上に居座り、自らの考えを部下に押し付けようとする。これからの時代を生き抜くためにはこの古い体質を一掃して、凛子のようなリーダーが必要となる。

 

やや時代遅れ感の漂う内容ではあるが、凛子はさながら民衆のために立ち上がったジャンヌ・ダルクのようである。一企業の話であるのに、新たなリーダーを迎える何処ぞの国の話にも通じるものがある。終盤の見せ場では苦境に立たされた凛子が部下を守るために保身を一切考えずに自分の意見を述べる姿が潔く、見ていてスカっとする。また仕事より仲間を大切にする凛子の姿勢も感心させられた。

 

全二話の短いドラマであるのが残念だった。

 

満足度は★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

あにいもうと

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 宮崎あおい、大泉洋、瀧本美織 他

【放送】 2018年(TBS)

 

妹を大切に思うからこそ馬鹿な行動を起こしてしまう不器用で愛情深い兄と反発する妹。狂おしいまでの兄と妹の絆、そして家族の在り方を問うヒューマンドラマ。原作は室生犀星著の『あにいもうと』。

 

赤座工務店を営む赤座家は棟梁の忍を中心に三人の子供達に恵まれ幸せな家庭を築いてきた。ところが長女の桃子が子供を流産した事から家庭に蟠りが生まれる。元々は非常に仲が良かった兄妹の伊之助と桃子だったのだが、それがきっかけとなりとうとう大喧嘩を始めてしまう。結果、桃子は災いの種である自分が家を出て行くと決意する。半年後、忍の古希祝いを開く事になる。実はそれを口実に桃子を家に戻すつもりだったのだ。次女の佐知から話を聞いた桃子は父親の祝いを無碍にする事は出来ず、トラック運転手の仕事を調整して半年ぶりに赤座家の敷居を跨ぐと決意する。ところが桃子より一足早く赤座家を訪ねて来たのは小畑裕樹だった。小畑は桃子の元恋人で、子供の父親でもある。仕事で海外に赴任中に桃子と連絡が取れなくなり、帰国した途端桃子の行きつけの飲み屋の女将から桃子が流産した事を知らされたのだ。桃子と小畑にどんな事情があるのかを知らない忍夫妻は伊之助とは会わせないようすぐに追い返したのだが、運悪く地鎮祭から帰宅した伊之助とかちあってしまう。伊之助は一方的に小畑を責め、挙句暴力を振るう。

 

ストーリーが古臭いと言うのはおいといて、何なんだこのドラマは?と感動する以前に腹立たしさを覚える。重要な場面は全て抜け落ちていて、いきなり〇年後だのナレーションで説明されて終了だの、幾ら何でも酷過ぎる。お陰で大切な事が何一つ伝わってこない。話の筋は判るが、ドラマであらすじだけ見せられているような気分にさえなる。

 

確かにこのドラマで重要なのは兄と妹の心境の変化である。それを家族や周囲の人達を交えて、さながら昔のホームドラマのような雰囲気を醸し出しながら進んでいき、その心境の変化だけでもゆっくり丁寧に描いていればまだ良かった。しかし二人の派手なやり合いの方に重点が置かれてしまい、心境の変化もまたすっ飛ばされてばかり。そんなに急いで何がしたいのか、さっぱり目的を見失っているような感じだった。現代でこのドラマを丁寧に描いて実写化するのは辛いのだろう。ただでさえニーズが合わない内容なのだから。しかし早い展開と派手さで目を引かなければ視聴者はついて来ないとでも言わんばかりに肝心な部分をカット。これでは本末転倒である。

 

何が良かったかと問われると良さがなかなか思い浮かばないが、子供のいがみ合いに心を痛める父親の忍の姿だけは心に残った。忍は唯一の伊之助の気持ちを理解している人物。だからこそ馬鹿な行動しか出来ない伊之助をただ黙々と見守っている。とまあ、そんな美味しい立場にいるのだが、途中でいきなり遺影に・・・。

 

決して面白いドラマでは無く、悪い意味で唖然とさせられるドラマだった。

 

満足度は★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

Cの悲劇 軽井沢別荘殺人事件

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 かたせ梨乃、古尾谷雅人、永澤俊矢 他

【放送】 2003年(テレ東)

 

軽井沢で暮らす在宅勤務のシステムエンジニアが書斎で殺害される。夫殺害の容疑をかけられた妻は事件に巻き込まれ、追い詰められていく。原作は夏樹静子著の『Cの悲劇』。

 

芦田千巻は夫・和賢と結婚してもうすぐ十年目を迎える。ある日、東京で友人と会った際、千巻は偶然夫が見知らぬ女性と一緒に歩いているのを目撃する。和賢はメディカルシステムの研究をするSEで、三年前に在宅勤務になったのを機に夫婦で嬬恋に引っ越して暮らしている。しかし夫との関係はすっかり冷え切っていて、一緒に暮らしていても会話があるわけでもない。そんな矢先の出来事だっただけに千巻は動揺を隠せなかった。帰宅した千巻は夫に東京で夫を見掛けた話を出すが、夫はただ仕事だと答えるだけで結婚十年目の祝いの指輪を差し出す。そんな夫に不信感を抱きながらも千巻は指輪のプレゼントに喜んでいた。丁度その時、芦田家を隣に引っ越して来た梶行男が挨拶に訪れる。梶は車に連れ込まれそうになった千巻を助けてくれた相手で、メンテナンス会社に勤めていると言う。その夜はコンピューターが苦手の梶相手に夫は饒舌に仕事の話を聞かせたりと和気藹々と過ごしていた。

 

愛の無い結婚生活を送るヒロインが真実の愛を知り、全てを捨てて愛に走る姿を描いたストーリーで、ラストは続きが気になる思わせぶりな場面で終了となるのだが、愛を選んだヒロインの幸せそうな表情が非常に印象深かった。例えその先にどんな結末が待っていようとも、その一瞬に感じた幸福が全てあり、それさえあれば後はどうなろうと構わない。そんな女の開き直りとも思える幸福が切なくもあり、羨ましくもある。女性の心情を切々と語るドラマである。

 

勿論、殺人事件を扱ったミステリーなので、そこにはトリックも存在する。しかし印象に残るのは圧倒的に追い詰められたヒロインの心の移り変わりである。誰が味方で誰が敵か判らぬ状況に陥ったヒロインにとって、信じられる人間は一人もいない。しかし夫を殺害されただけでも心細いのに、周囲は彼女をじわじわと追い詰めていく。まさにミステリーの真骨頂である。そして彼女が信じたのは愛だった。何ともロマンティックではあるが、実際そんなものかも知れない。傍から見ればそれは危険極まりない決断かも知れないが、ヒロインにとっては一番幸せな選択なのだから。

 

それにしてもストーリーはともかくとして、キャスティングはイマイチ。役柄と役者が合っていない感じがしてならないのだ。またちょい役に見えて実は重要なキーマンに普通はこんな役は演じないだろうベテラン俳優を起用しているので、先々この人が事件に関わって来るというのが丸わかりである。

 

ミステリー面に関してはちょっと物足りないものの、ヒューマンドラマとしては面白いドラマである。

 

満足度は★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

崖っぷちホテル

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 戸田恵梨香、岩田剛典、りょう 他

【放送】 2018年(日テレ)

 

すっかり落ちぶれた、まさに崖っぷちのホテルを若き総支配人と謎の男が中心となって建て直していく。ホテル立て直しストーリー。

 

ホテルグランデインヴルサはかつては栄華を誇った高級ホテルだったが、今や落ちぶれて破産寸前。前総支配人の死後、息子が多額の借金をこさえて逃げてしまったのだ。総支配人を継いだのは妹の桜井佐那。しかし経験不足の彼女の威厳はゼロに等しく、従業員には完全に見限られていた。何とか利益を出そうと旅行代理店にツアーを頼んだのが仇となり、格安ツアーの常識のない団体客でホテルはてんやわんや。その上、従業員は誰もかれもがやる気なし。副支配人の時貞に至ってはホテルを売却しようと画策している始末。そんな時、謎の客・宇海直哉がホテルを訪れる。彼にはこのホテルに何か思い入れがあるようなのだが、彼の風体を見るなり副支配人達は品位を落とすから追い出せと支配人に文句を言う。しかし佐那は追い出さず、言われた通りスウィートルームへと通す。部屋に案内されてからも宇海は次々注文を出すのだが、従業員達は面倒臭がって何もしない。出来る限り客の要望に沿うのがホテルマンだと思っている佐那は一人で宇海の注文に答えるのだった。一方、この日は五年に一度必ず訪れる古参の客。笹川加奈子が亡くなった夫の代わりに孫の奈菜美を連れて訪れる。一泊二十万円以上もするスウィートルームの宿泊客なのにサービスは最悪。とうとう奈菜美は金額に合わないサービスに怒り出す。

 

すっかり落ちぶれてしまったホテルを悲しむ総支配人の佐那が、ふらりと現れた敏腕ホテルマンの宇海と共にホテルの立て直しを図るストーリーで、だからと言って宇海が堕落した従業員たちの意識改革を行うために教育するような事はしない。ただ思い付きを口にして様々な問題に彼等を対処させるという方法で彼等にホテルマンとしてどうあるべきかを学ばせるのだ。ホテルの立て直しとなると普通は様々な切り口から悪い点を洗い出していくものである。しかしこういう間接的なアプローチは興味深い。そもそも従業員たちは決してホテルの仕事が嫌いなわけではない。総支配人の佐那だってそうである。彼女には総支配人としての資質は十分にあるのだが、突然の就任でノウハウを学ぶ前に総支配人となってしまった。おまけに従業員たちは彼女をひよっこと舐めている。それがどう変わっていくのか、宇海の持ち込む問題が意外な方向にホテルを導いていくのが楽しみだった。

 

それにしても随分奇抜なキャスティングをしたものである。駄目な雰囲気を出すための演出でもあるのだが、特にフロント係とベルマンに関しては凄いのを連れて来たとキャスティングに驚かされる。また比較的まともな印象のあるりょう演じる梢も、まさかのウィッグ愛用者。ただ意外性のあるストーリーだけでなく、あちこちに落としどころを仕込んでいて、コミカルな上に最後は必ず心温まる結末へと導いてくれる。派手さのあるドラマでは無いが最後まで楽しめる内容だった。夢のあるドラマは大歓迎である。

 

満足度は★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

宮本から君へ

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 池松壮亮、柄本時生、華村あすか 他

【放送】 2018年(テレ東)

 

文具メーカーの新人営業マンが仕事に恋に社会に必死に向き合って成長していく姿を描いた成長物語。原作は新井英樹のコミック『定本 宮本から君へ』。

 

文具メーカー『マルキタ株式会社』の新入社員・宮本浩は仕事に追われ、会社と家の往復の虚しい日々を送っている。そんな宮本の楽しみは電車のホームで一目惚れした美女。今日こそは話し掛けようと思いながら、全く実現出来ていない。それでも彼女に関する情報は少しずつ入手していて、彼女の名前が甲田美沙子で、マルキタと目と鼻の先にあるトヨサン自動車の受付嬢という事までは判明していた。ある日、宮本は意を決して電車に乗ろうとした美沙子を大声で呼び止めるという行動に出る。それがきっかけとなり、美沙子と毎朝話して通勤する仲へと一歩前進する。そんな中、美沙子から合コンがしたいのでメンバーを集めて欲しいと頼まれる。美沙子の同僚で宮本に興味を示す女の子・ゆながいると言うのだ。美沙子との関係を発展させたい宮本は快諾し、同僚の田島と大芝に声を掛ける。ところが場を盛り上げる田島に引き換え、宮本はゆなと会話が全く弾まない。ゆなは自分に全く自信が持てず、何をしても失敗する女の子だった。とうとうゆなは自分の不甲斐なさに泣き出してしまい、涙を隠すために上着を取ろうとする。ところがその際に宮本が上着のポケットに隠し持っていたコンドームをフルーツポンチの中へ落としてしまい、宮本の本心が皆の前に晒される事になる。

 

自分が許せない事。そんな物にも巻かれなければ世の中生きていけない。不条理な世の中を知る内に、宮本はただ巻かれるだけでなく、吠えて自分の感情を外にぶつけていく事を覚えていく。先輩社員の神保の姿を見ながら、営業マンとは何か、男とは何かを宮本は絶えず吠えながら生きていく。それはある意味成長物語ではあるのだが、人間として成長しているのかどうかは図る事は出来ない。何故なら傍から見れば宮本は己の感情を制御できずただ吠える人間に成り下がってしまったのだから。

 

このドラマはそんな宮本を愛せるかどうかで評価は変わって来る。宮本は半端で吠えるだけの馬鹿であり、愛せるどころか吐き気をもよおす。様々な出来事を経験して少しずつ変わっていく宮本の姿を見る度にどんどん嫌悪が増していき、見るのが辛くなっていく。言ってしまえば大人の男向けのストーリーであり、この宮本を大きな心で受け入れる世界観を理解出来ないとただただ馬鹿が暴れているだけのドラマを見せられる事になる。

 

完全に許容範囲外の内容のため、見始めてしまった事をかなり後悔した。

 

満足度は★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ

あなたには帰る家がある

JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

 

【出演】 中谷美紀、玉木宏、木村多江 他

【放送】 2018年(TBS)

 

一見幸せそうな家庭も円満とは言い切れない。壊れてしまった事に気付かぬ二組の夫婦が不倫問題を機にもう一度家庭を、夫婦を見直していくホームドラマ。原作は山本文緒著の『あなたには帰る家がある』。かつて人気を博した金曜日の妻たちのシリーズをもう一度を掲げて制作されている。

 

佐藤真弓は結婚して十三年目の専業主婦。サラダを作ろうと冷蔵庫のハムを取り出すと賞味期限を一日過ぎていた。これくらいなら大丈夫とサラダに混ぜて食卓に出したが、夫・秀明はサラダの中のハムを見た途端冷蔵庫を開けてハムのパックを出してチェック。秀明は非常に几帳面な性格で賞味期限に疑問を持つと冷蔵庫チェックが始まるのだ。学生時代体育会系の真弓は細かい事に構わない性格だけに、几帳面な秀明とは何かと衝突する事が多い。真弓も秀明もそんな家庭の鬱憤を知人・三浦圭介の経営するカレーショップへやって来ては愚痴っていた。一人娘の麗奈の中学入学式、ようやく子育ても一区切りついたと実感した真弓の前にかつての同僚・愛川由紀から復職を勧められる。一方、秀明はモデルハウスに訪れた茄子田綾子と運命的な出会いを果たしていた。感情をそのまま表に出す偏屈な夫に従順に尽くす妻・綾子が気になり始める。真弓は帰宅した秀明に復職したいと願い出るのだが、秀明はあまり関心がない様子。秀明より稼いでやると意気込む真弓だったが、いざ復職してみると真弓は完全な浦島太郎状態。すっかり落ち込む真弓だった。

 

まず思うのは金妻ってこんな感じだったのかな?と腑に落ちないものを感じた。まあ、当時は当時の主流があって、金妻はそれに沿った上に当時としてはショッキングな不倫にはまる人々とその家族の崩壊や再生を描いた内容だった事はおぼろげながら記憶しているが、そう言った面から見ればこのドラマも金妻の流れに沿って制作されたのだろうと想像する。ところがである。原作がかなり昔の話であり、また金妻もかなり古い時代の主流である事から、古臭さを一蹴するために奇をてらった展開で登場人物を動かしているため、登場人物の言動に何処か一貫性がなくなってしまう。序盤はそれぞれの本音が語られて納得する面もあったが、途中からは首を傾げる事多し。何だかまるで何でもありのラノベ世界に入り込んでしまったような気さえする。

 

不倫が元で会社で信頼を失くしていく秀明の流れは判るが、復職した真弓に関しては殆ど仕事の話は途中から何処かへ行ってしまう。終盤は真弓と夫の不倫相手である綾子の意地の張り合いの話ばかりで、これがまたくだらない。正反対の女の本音のぶつかり合いというのとはまるで違う。ただ現状に満足できないから、ただ相手に負けたく無いから、ただただそんな気持ちばかりで現実味を感じないのだ。男(夫)を持ち物のようにやり取りする二人にいい加減うんざりさせられた。中身の無いドラマである。

 

満足度は★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ


カウンター

ブログパーツUL5

にほんブログ村

search this site.

profile

categories

latest entries

archives

recent comment

links

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM