証明

  • 2012.11.14 Wednesday
  • 17:05
JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

【出演】 風間杜夫、原田三枝子、内藤剛志 他
【放送】 1994年(TBS)

妻の一言が夫の命を奪った。売れない小説家と献身的な妻が辿った愛の末路。原作は松本清張著の『証明』。

裏山に人知れず存在する洞窟。子供達がそこに足を踏み入れると、中で男の遺体が横たわっていた。男の名は高木信夫。死因は服毒自殺だと判明した。男が身に纏っていたレインコートはロンドンの有名ブランド製品で、『Hirai』と中に刺繍がされている。レインコートにはべったりと返り血を浴びた跡があり、持ち主である仏文学教授・平井忠二の物だと判明。その後の捜査で高木の妻・久美子と平井は肉体関係にあり、妻の不倫を知った夫が逆上し平井を殺害した後自殺したと警察は断定した。

ドラマは警察に事情聴取を受けた久美子の回想によって展開していく。久美子と信夫の間に何があったのかを二人が結婚してからの時系列で辿っていく。

ドラマを見て真っ先に高木信夫という男の描き方の秀逸さに度肝を抜かれる。そもそも原作者が小説家であるので、小説家の内情を良く知っているというのもあるが、実際に信夫のような人間が小説家志願者の中にはごまんといる。小説家ばかりが集まる同人誌の中では仲間達から最高の賞賛を受けてのぼせ上がり、これならプロでやっていけると過信してしまう。しかし小説家志望の人々の間で受ける評価と出版社の評価はまるで違う。出版社が本にするのは一般人に受け入れられる小説であり、小説の作法に則った文芸作品ではない。一般人の心に訴える作品で無ければ出版社からは商業価値がないと判断されてしまう。職業作家の作品は読者ありきの小説なのである。信夫はまさにそうした小説家志願者の一人であり、自信を持って出版社に自分の作品を売り込んでいく。自信があるからこそ自身の作品を思うように評価してくれない編集者を無能呼ばわりし、職業作家になるには時間が足りないとばかりに会社も辞めてしまう。決して自分の実力不足とは考えない。この手の思考に走る人間は実は非常に多いのが現状である。このドラマはその辺りを驚く程リアルに表現している。

同人誌では優等生だった信夫も出版業界では無能扱いされる。信夫の名前はやがてブラックリストにのり、一方同人誌の後輩が出版業界では作家先生と褒め称えられる。それが現実なのだと開き直る勇気を持てなければいつか心は破滅する。しかし大抵はその勇気を持てないものなのかも知れない。

このドラマはそんな勇気を持てない信夫に何の気なしに囁いた久美子の一言が信夫に終止符を打たせた。しかしそれは同時に信夫を愛し抜いた久美子にとっても終止符。すっきりとしないラストは松本清張作品らしさが滲み出ている。

満足度は★★★★★

にほんブログ村 テレビブログ 推理・サスペンスドラマへ
コメント
コメントする

calendar

S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered by

無料ブログ作成サービス JUGEM