球形の荒野

  • 2015.02.27 Friday
  • 19:31
JUGEMテーマ:日本のTVドラマ

【出演】 栗原小巻、村井国夫、加藤治子 他
【放送】 1978年(フジ)

寺の芳名帳に二十年以上も前に異国で死亡した外交官の筆跡で記名があった。彼の娘とその恋人の新聞記者が彼の亡霊を追って連続殺人事件に巻き込まれていく。戦時中の日本外交を扱った社会派サスペンス。原作は松本清張著の『球形の荒野』。尚、主題歌には加藤登紀子の『この空を飛べたら』が使用され、オープニングはサスペンスと言うよりは大人のロマンス作品のような雰囲気を醸し出している。

昭和42年冬、野上久美子は従姉妹の芦村節子と共に古寺巡りを楽しんでいたが、節子の狙いが村尾から持ち込まれた縁談を勧めるためと知ってうんざりする。実は久美子には新聞記者の添田彰一という恋人がいて他の男性との縁談にはまるで興味が無かったのである。帰り際、芳名帳を何気なく眺めていた節子が突然酷く慌てた様子で飛鳥寺へ行くと言い出す。節子の態度の変わりように戸惑いつつついていくと、節子は飛鳥寺の芳名帳の『田中孝一』という名前を指してそれが久美子の亡き父・顕一郎の文字だと言い張った。顕一郎は外交官としてスイスへ渡ったが、二十年以上も前に病死している。気になった久美子は母親の元に届いた顕一郎からの手紙を借りて添田に見せに行く。

『球形の荒野』は松本清張作品の中でも比較的実写化された回数が多い作品であり、数々の名優がこの作品に関わっている。1978年版では栗原小巻が主演を務め、育ちが良く芯の強い上品なお嬢様を好演している。時代を考えるとファッションにもかなり気を使っているのが見て取れる。

芳名帳に残された筆跡から海外で病死した父親の生存を信じて恋人の新聞記者・添田と父親の行方を探す久美子のストーリーで、途中連続殺人事件が起きる等血生臭い話を交えてはいるものの、ドラマの中心となっているのは常に人間の愛情である。そうした側面を持つためサスペンス要素の強いラブロマンス風の作風であり、大人の良質のドラマを見せられたような感じになる。特にラストシーンは綺麗に結んでおり、例え未来が無くてもこの一瞬に込められた強い愛情がひしひしと伝わってくる。その反面、昨今ドラマ化された同原作のドラマに比べると戦争の影はなりを潜めている。

タイトルは久美子の父・顕一郎の心を言い表した言葉である。ドラマの中でその説明がとある人物の口から語られるのだが、あまりに絶妙な表現に背筋が寒くなった。全ての関わりを断った人間が生きる世界は果てしなく続く荒野。それが死ぬまで続くのである。何の希望もなく、何もかもが手の中を砂となってこぼれおちていく。想像するだけで恐ろしくなる。

満足度は★★★★★

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