沈黙
JUGEMテーマ:日本のTVドラマ
【出演】 藤真利子、早乙女愛、小林稔侍 他
【放送】 1988年(フジ)
夫の浮気に無関心だった妻が夫の浮気相手が親友だと気付いた時、彼女の心に複雑な感情が芽生える。浮気性の夫を持つ妻の心情を語るサスペンス。原作は森瑤子著の『カフェ・オリエンタル』。このドラマは女流作家サスペンスの一篇として放送された。
朝の五時に帰宅した孝雄は不意に鳴った電話をとると、かけてきたのは妻の亜矢の親友を名乗る水島由紀子だった。まだ眠りの中にいた亜矢が目を擦りながら応対している内に由紀子の異常に気付いて慌てて孝雄と共に由紀子のマンションへ駆け付ける。すると由紀子は思った通り睡眠薬の過剰摂取で意識が無かった。由紀子は不眠症で、原因は夫の浮気にあった。由紀子の夫は既に三日も家には帰らず、見舞いにも来ようとしない。亜矢が説き伏せてようやく顔を出した由紀子の夫は持参した離婚届を亜矢に渡して、浮気は何度もしていたのに何故急に自殺騒動を起こしたのか理解に苦しむと心境を話す。亜矢は女の勘で今度の浮気が本気だと見抜いたからだと指摘する。実際由紀子は夫が今の彼女と半年も続いていることから、夫の浮気が本気になったと考えていた。
いきなり青い蛙が早贄にされている光景が映し出されるという何とも不気味なオープニングがやけに印象に残る。
浮気性の夫の妻が夫との夫婦関係を続けていくには夫の浮気に寛容で見て見ぬふりを決め込むこと。まだこの時代は浮気は男の甲斐性などという言葉が残っていた時代でもあるため、妻が夫の浮気を責めるようになったら夫婦関係は終わりと決め込んだ妻の話で、夫に無関心であるのは決して愛情がないわけではなくその逆に浮気していたとしても自分の所に最後は帰って来てほしいと望む妻の悲しい願望がその中に押し込められている。そして悲しいかな悪いのは浮気をする夫なのに、置き去りにされた妻の憎悪は浮気相手へと向けられる。このドラマはそんな悲しい妻の心境を如実に語ったストーリーである。
さて夫の浮気と本気はどこで見分けるか?
それがある意味このドラマのキーポイントとなっている。ドラマ内では女の勘が働いたと言っているが、女の勘ではなく夫の行動パターンを妻が認識していて、違いを常に嗅ぎ取っていると言った方が正確である。また夫の些細な行動パターンの変化は妻だからこそ気付くというニュアンスも伝わって来る。
現代とはかなり異なる感覚で描かれたドラマだけに現代人がこの妻の心境を理解出来るのか否かは微妙な線である。その反面、沈黙を守り続けることで夫を手放すまいとした妻の執念の凄まじさを感じた。
満足度は★★★★
- 2016.10.16 Sunday
- 2016
- 15:02
- comments(2)
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- by 梔子
おっしゃるように現代の感覚とは異なり、男が好き放題で女が耐え忍ぶという時代だったのでしょう。だからといって当時の女性が弱かったのではない。この凄まじい執念は今の時代には無い圧倒的な女のパワーを感じました。そして早乙女愛がとっても綺麗ですね。お亡くなりになったことが残念でなりません。エンディングのテレサの歌も、大変良いと思いました。